
「民泊元年」と呼ばれた2016年。多くの個人や企業がairbnbをはじめとする民泊ビジネスを始めました。airbnbも世間一般に広く知られるようになり、国内のairbnb利用者数は増え続けています。
さて、東京オリンピックを3年後に控え、日本は観光客の増加を目指しています。その一環として、増加する外国人観光客を受け入れるべく、条件付きではあるものの徐々に民泊解禁の波が広がっています。
airbnbはそうした民泊ビジネスの代表で、現在では日本に訪れる外国人観光客の10%はairbnbを利用しているというデータもあります。しかし、民泊市場が大きくなるにつれ、近隣の住民からの苦情やホテルや旅館など既存サービスとの対立など、今までになかった問題が起こるようになりました。(今年の春節では民泊施設に対抗するべく、ホテルや旅館の料金が前年に比べて、かなり安く設定されたというニュースが話題になりましたね。)
上記の問題に対応するため、ここ数年で政府や各自治体は法規制に本腰を入れ初めています。昨年、違法民泊ビジネスをおこなったとして、大阪や京都などで摘発が相次ぎました。その他にも民泊に関するルールを無視して運用を続けたため、運用停止に追い込まれるホストが後を絶ちません。airbnbに登録しているホストの大半はこうした違法民泊にあたるのではないかという指摘もあります。違法民泊の摘発が厳しくなっていくのは目に見えているので、今後は民泊に関する法令を理解し、合法的に運用していく必要があるのです。
airbnb運用を始める上で、関連する法律等を知っておくことが後々の安定した収益につながります。
今回は、今話題になっている民泊新法をはじめ、airbnbに関する法律を解説していきます。
日本でのairbnb運用は結局合法?違法?
結論から申し上げますと、今後は、自分の物件の属するエリアにあった法令を遵守しなければairbnbの運用を自由におこなうことはできません。
今までは、民泊という新しいビジネスに法整備が追い付いていませんでした。つまりairbnb運用について具体的な法令がなかった(=グレーな状態だった)わけです。しかし、今後は該当する法令を守らない場合は完全にブラックとなり処罰の対象となります。
特に現在も内容が検討されている「民泊新法」でairbnb運用にどのような影響が出るかは注視したいところです。
2017年に政府が国会に提出予定の民泊新法案に注目が集まりますが、他にも旅館業法や戦略特区内の民泊条例など覚えておきたい法令があります。
airbnbは民泊サイトの中でも最大で、日本だけでも既に24,000件以上のリスティング登録がされています。今後もこの数は増えていくと予想されますが、違法運用をしているホストは淘汰されていくでしょう。
それでは、airbnb運用を始めるために知っておくべき法規制等を見ていきましょう。
徹底解説!民泊に関する決まりとは
airbnbの運用を始めるために守らなければいけない法令は下記の3つの法令・条例の内、いずれかです。3つの内、どれか一つの法令が定める要件を満たしていないと違法となります。自分の物件、所在地、資金に応じて、どの法令の要件をクリアするかをしっかり決めておきましょう。
- 旅館業法(簡易宿所営業)
- 民泊条例(国家戦略特別区域で定められた民泊特区内の物件に限る)
- 民泊新法(2017年以内に成立予定)
民泊新法は現在審議中のため、現時点(2017年2月時点)で効力のある法律ではありません。2017年末までに成立予定なので、それまでに運用をスタートする場合は1の旅館業法もしくは2の民泊条例の要件を満たす必要があるので注意が必要です。
さて、3つの法令について、表でまとめたものが下記です。
| 旅館業法(簡易宿所) | 民泊条例 (大田区の場合) | 民泊新法*1 (住宅宿泊事業法) |
運用エリア | 全国で可能 (ただし、第一種・二種住居区域など法令によって定められた用途地域内であること) | 国家戦略特別区域内で民泊条例を制定している地域(ただし、第一種・二種住居区域内であること) | 全国で可能 (住居専用地域でも可能になる予定) |
最低宿泊日数の制限 | なし | 2泊3日以上 | なし |
年間営業日数の制限 | なし | なし | 180日以内 |
延床面積の規定 | 3.3 m²以上/1人 (一度に10人以下が宿泊する場合) | 25 m²以上 | なし |
衛生管理の責任 | 事業者が衛生管理に責任を有する。 | 使用時に清潔な環境を提供する義務があるが使用中は宿泊者の自己管理に委ねられる。 | 一般的な衛生管理措置が必要。 |
特記事項 | 認可を受ければ、一般の宿泊サイトでも集客可能。 | ・民泊条例が設けられている民泊特区によって要件が異なる場合がある。 | ・家主居住型と家主不在型それぞれに異なる規制が設けられる予定。 |
*1…民泊新法は現在審議中のため上記の条件は決定事項ではない。
それでは、それぞれの法令に関して詳しくみていきましょう。
旅館業法(簡易宿所営業)
旅館業法では四つの営業形態(ホテル営業・旅館営業・簡易宿所営業・下宿営業)が定められており、airbnbなどの民泊を始めるためにはその中でも簡易宿所営業の要件を満たす必要があります。営業許可をとればairbnb以外の宿泊サイトでも集客ができるため、収益を出したい人に一番おすすめなのが、この、旅館業法をクリアしてairbnb運用を始めるという方法です。
しかし、建築基準法で定める用途地域内でなければ営業ができない点や、消防設備などにおいても厳しい条件が課せられている点に注意が必要です。仮に立地面で基準を満たしていても、自分が住んでいる物件をそのままairbnbで運用するのは、多額の改修をおこなわない限り難しいでしょう。また、食品を提供する場合は食品衛生法で定める基準を満たさなければならないことも忘れてはいけません。営業許可を得るためには申請料金もかかりますし、一連の手続きは専門家の力を借りなければ、かなり煩雑なものになるでしょう。
このように、費用の面でかなり高額になる場合が多いですが、もし初期投資をする余裕があるのであれば、営業日数や宿泊日数の制限を受けないので一番収益を見込める方法といえるでしょう。
ちなみに簡易宿所の定める延床面積は2016年に緩和され上記のような規制になりました。国が宿泊施設の増加を促すためにこうした緩和が今後もなされる可能性があります。
民泊条例
前章で触れたように、旅館業法はハードルが高いため、一般の人の参入がなかなかできませんでした。そこで、より民泊ビジネスを推進するべく、2015年1月から東京都大田区にて施行されたのが民泊条例です。大阪府も後に続き、民泊特区として制定されました。
民泊条例は国が定める国家戦略特別区域内で、民泊条例を定めている地域においてのみ適用されるもので、各自治体に申請をして認定を受けることで特区民泊として運用することが可能になります。
特区民泊で運用をおこなう一番のメリットは、旅館業法の要件を満たさなくとも、各自治体が定める民泊条例を遵守すれば合法的にairbnbが運用できる点でしょう。
また、民泊特区として制定される地域は慢性的にホテルなどの宿泊施設が不足しています。例えば大田区のホテル稼働率は90%を超えています。それにも関わらず、羽田空港が近いために外国人向けの宿泊施設がより必要だから、民泊の参入を容易にして宿泊施設を確保しよう、というのが政府の狙いです。つまりairbnbの稼働率をあげるには絶好の場所なのです。
最低宿泊日数が定められていたり、外国語での案内(災害時のガイドラインなど)が必要であったり、旅館業法にない制約がありますが、特区内でのairbnb運用は収益性が期待できます。
民泊新法
airbnbを巡る法律で、今もっとも注目を集めているのが、この民泊新法ではないでしょうか。民泊新法は現在、国会で内容が審議されており今年末までの成立、施行を目指しています。
確定情報ではありませんが、民泊新法の目玉は「一般の住居の貸し出しが可能になること」と「届け出制で運用が可能になること」の二点でしょう。
住居の貸し出しが可能になれば、旅館業法や民泊条例のような用途地域を気にする必要はなくなります。また、営業許可や認定を受けずに、インターネットの届け出だけで営業がおこなえるようになる予定です。
もし、民泊新法が可決されれば、空き家や空室を活用すべく多くの人がairbnbでホスト登録をするでしょう。しかし、airbnbで収益を出そうと考えている方は次のことに注意が必要です、
民泊新法で懸念すべき営業日数とは
旅館業法のように建築基準法に悩まされる必要もなく、民泊条例のように適用エリアに縛られる必要もない、民泊新法を使ったairbnb運用…なんだか良いことづくしのように聞こえますが、年間営業日数の制限には注意が必要です。
現在、法案では年間の営業日数を180日までにすると予定されています。なぜかというと、ホテル業界などが民泊ビジネスによって観光客を取られることを懸念して制限を求めているからです。
実際、オランダのアムステルダムでは年間営業日数が60日までと定められています。日本では30日以内にするべきだ、という声も上がっています。よって法律として可決されるまでは注意して確認する必要があるといえるでしょう。また、あらかじめ営業する日程を届け出するべき、という意見も出ているようです。
ちなみに今年に入り、airbnbは年間営業日数をホストに厳守させる姿勢をみせており、年間営業日数を上回ったホストの物件はサイトに表示されなくなる機能を導入するとすでに発表しています。ですので、民泊新法を適用して運用を始めた場合は、必ず営業日数を守る必要があります。
民泊新法が可決された場合、収益性が見込めるかどうかはまだ未知数です。年間営業日数を定める必要がないという意見もあるようなので、どのように法案がまとまっていくか、まだ不透明な部分が多いのが実情です。
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