
airbnbに代表される民泊ビジネスはまだサービス自体が始まって間もなく、日本では早急な法整備が必要となっています。現在airbnb運営を始めるには旅館業法(簡易宿所営業)の条件を満たす必要があります。
しかし、昨今は違法民泊も問題になっています。行政側の許可なくゲストを宿泊させ、対価を受け取っているホストが多くいるのが現状です。それはairbnb運営に必要とされる旅館業法が定める簡易宿所としての認定を受けるのがあまりに厳しいからといえるでしょう。
そんな中、今注目を集めているのが「国家特別戦略区域」内で定められている民泊条例というものです。旅館やホテル同等の設備を求められる厳しい旅館業法を緩和し、旅館業法を守らなくても、民泊条例を守ればairbnb運営ができますよ、という新たなルールがつくられたのです。
では、具体的に民泊条例とはどのようなものなのか、そして、既存の旅館業法との違いは何かみていきましょう。
ハードルが高い旅館業法
冒頭で述べた旅館業法ですが、これは宿泊営業をするにあたって必ず届出が必要になる法令です。旅館業法は、ホテルや旅館など営利目的で(主に企業が)運営を始める際に満たさなければならない要件なので、ハードルがとても高いです。例えば建築基準や水回り設備(宿泊人数あたりのトイレの数など)や、採光、衛生基準が事細かに定められています。
次に、全ての建物には用途が定められています。例えば一般住宅向けの物件で、ある日を境にいきなり不特定多数の人に部屋を貸すビジネスを始めることはできません。ですので、自宅の一室を用いてairbnbの運営を始める際に旅館業法を遵守しようとすると、ほとんどの場合、改修を求められる可能性が高いのです。
また、そもそも立地が障壁となる可能性もあります。旅館業法では宿泊営業形態を四つに分けており、airbnbの運営には「簡易宿所」の営業許可を受ける必要があります。簡易宿所の営業許可を受けるにあたって、上記の建築基準を満たすだけでなく、周囲にどんな建物があるかも問題になるのです。
例としては簡易宿所となる物件のおおよそ100m以内に学校などの公共施設がある場合は、公共の安全を侵害しないかどうか、保健所の審議を受けなければいけません。
そのほか、「100㎡の壁」と呼ばれる問題にも注意が必要です。これは住宅として用途を限定している物件で100㎡を超えるものは、簡易宿所へ用途変更する場合、特別な申請が必要になるというものです。この申請に多額の費用がかかる場合もあります。簡易宿所の認定を受けるために、莫大な初期費用がかかってしまう可能性があるのです。
一気にairbnb運営への道が遠のいたように感じるかもしれません。
しかし、民泊ビジネスは国が後押しをしています。都市部を中心にホテルなどの宿泊施設は慢性的に不足しており対策を講じる必要があるからです。
対策の一つとして国家戦略特別区域で定められているのが、民泊条例なのです。これによって、国は皆がairbnb運営を始めやすいように法整備を進めています。(すべての国家戦略特別区域において民泊が認められているわけではないので注意が必要です。)
押さえておきたい民泊条例
それでは、旅館業法よりハードルが比較的低い民泊条例についてみていきましょう。まず民泊条例というのは国家戦略特別区域において物件を民泊に使用する際に適用されるものです。(こうした民泊条例が適用されるエリアを民泊特区と呼びます。) これは、第二次安倍内閣が成長戦略の柱として掲げているものです。
2014年5月1日に施行された「国家戦略特別区域における旅館業法の特例の施行について」という通知では、「訪日外国人(海外からの観光客)向けに宿泊施設を提供するにあたり、特別区域内として指定された地域内であれば旅館業法は適用されない。」といった内容で民泊は合法と認めています。
こうして2015年10月に東京都大田区で民泊営業が正式に認められました。今後も、各区域において民泊解禁の波が広がっていくと思われます。
現在、国家戦略特別区域として制定されている地域は下記の通りです。
・新潟県新潟市
・秋田県仙北市
・宮城県仙台市
・東京圏(東京都・神奈川県・千葉県成田市・千葉市)
・愛知県
・関西圏(大阪府・兵庫県・京都府)
・広島県
・愛媛県今治市
・福岡県福岡市・北九州市
上記の中で民泊特区として指定されている地域があるかどうか、確認が必須です。もしあなたの物件が民泊特区の中にあれば、圧倒的なアドバンテージをもってairbnbの運営を始めることができるのです。
もちろん区域内であれば、勝手に営業をしてもいいというわけではありません。事前に区に届出をして審査を受ける必要があります。それでは、どのような条件を満たせば民泊特区でairbnbを使った収益を得られるのでしょうか。
徹底解説! 民泊条例
民泊条例では旅館業法に比べ、比較的ハードルが低いとお伝えしました。ですが、同時に旅館業法にはないルールが課せられている場合もあるので、事前の確認が必要です。それではまず民泊条例のポイントを見ていきましょう。
国家戦略特別区域法 12条
1.宿泊施設の所在地が国家戦略特別区域内にあること。(また第一種住居区域もしくは第二種住居区域などに該当する地域であること)
2.使用期間(最低宿泊数)は7日から10日 → 2泊3日(2016年9月に引下げ)
3.各居室が次の条件を満たしている
-居室の床面積は25平方メートル以上
-施設の出入り口と窓は鍵をかけることができる
-出入り口と窓を除き、居室と他の居室、廊下などとの境は、壁造りであること
-換気、採光、照明、防湿、排水、冷暖房設備を有すること
-台所、浴室、トイレおよび洗面設備を有すること
-寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理器具または設備清掃器具を有する
4.施設の使用開始時に清潔な部屋を提供すること
5.施設の使用方法に関する外国語を用いた案内、緊急時における外国語を用いた情報提供その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供すること
6.当該事業の一部が旅館業法(昭和23年法律第138号)第二条1項に規定する旅館業に該当するものであること
まず、押さえておきたいのが、必ず特別区域内に物件がなければいけないということです。その中でも「建築基準法上、ホテルや旅館が建築可能な用途地域」でなければいけません。東京でいえば、田園調布などの高級住宅街で民泊をおこなうことは難しいと考えられます。
次に民泊条例には宿泊日数の制約があることに気をつけるべきでしょう。まだまだ民泊特区内の認定物件の数が少ないのは、この宿泊日数の制約があったからだと考えられます。そのため、最低宿泊日数は大幅に引き下げられました。
また、施設の使用方法や緊急時の避難の際に英語や外国語での情報提供ができるようにしておくことも大切な要件の一つです。
民泊条例はもともと、旅館業法で定められている厳しい建築基準などを緩和する目的で作られました。そのため、旅館業法に比べ建築基準などが緩和されています。
例えば旅館業法の簡易宿所として営業許可を得るためにはフロントの設置をしなければならないこともありますが、民泊条例ではフロント設置の必要はありません。また、従業員を雇う義務もありません。建築基準面において旅館業法の要件を満たすのが難しい場合は、こうした民泊特区で物件を探す、というのが得策でしょう。
民泊条例で注意したい点
メリットの多い民泊条例ですが、注意しておきたい点もいくつか紹介しておきます。
近隣住民への周知
条例によって定められた範囲の近隣住民へ民泊として物件を使用する旨を周知する義務があります。これは後々、近隣住民とのトラブルを防ぐために大切なことなので、必ず行ってください。
年間営業日数
民泊特区にてそれぞれ年間の営業許可日数が制限されている場合が多いです。この場合、収益にダイレクトに影響しますから、必ず確認が必要です。
ゲストの身元証明の徹底
ゲストの個人情報の提示・保管についてガイドラインがあるので、必ず個人情報の取り扱いについて理解をしてから運営を始めましょう。ゲストがあなたの部屋を使用している時に何らかの問題が起こった場合は必ずパスポートの提示が必要となります。
地域独自の条例
京都のバリアフリー条例など、民泊条例では定められていなくても、地域独自の条例があるか調べておきましょう。もし知らないまま初期投資の計算を進めてしまうと、思わぬ出費に繋がるかもしれません。こちらも注意が必要です。
終わりに
民泊条例は建築基準などにおいて旅館業法よりもアドバンテージがあります。今回説明した注意すべき点をしっかり押さえて、民泊特区で物件を運営することを検討されてはいかがでしょうか。
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